KPI ツリーの作り方|PdM が事業目標を計測可能な指標に分解する 5 ステップ

KPI ツリーの作り方|PdM が事業目標を計測可能な指標に分解する 5 ステップ

KPI ツリーは事業の最終目標を計測可能な指標に階層分解する PdM 必須のフレームワーク。本記事では作り方を 5 ステップで解説し、SaaS / B2C プロダクトの実例も紹介します。

著者: Granty 編集部

この記事でわかること

  • KPI ツリーの定義と PdM が使う理由
  • KPI ツリーを作る 5 ステップ
  • KGI / KPI / OKR / ノーススターメトリックの関係性
  • SaaS と B2C プロダクトの KPI ツリー実例
  • KPI ツリー運用でよくある失敗パターン

KPI ツリーとは

KPI ツリーは、事業の最終目標である KGI(Key Goal Indicator)を、達成に必要な要素に階層的に分解した「指標の地図」です。トップに 1 つの大目標を置き、その下に達成要素を 2〜5 個に分解し、さらにその下に細かい指標をぶら下げていきます。

PdM が KPI ツリーを使う最大のメリットは「どの指標にレバーを掛ければ事業が伸びるか」が見える化されることです。プロダクト改善の優先順位を客観的に決める材料になり、チーム全員が「今やっていることは事業のどこに効くか」を共有できます。

KPI ツリーを作る 5 ステップ

ステップ 1: KGI(最終目標)を定義する

まず「このツリーの頂点に何を置くか」を決めます。KGI は事業全体のゴールで、通常は売上・利益・契約社数といったビジネス指標です。SaaS なら ARR や MRR、B2C なら売上やユーザー数が典型です。

注意点: KGI を曖昧にせず、必ず数値目標を含めること。「来期 ARR 10 億円」のように具体化します。

ステップ 2: KGI を構成要素に分解する

KGI を構成する要素を 2〜5 個に分解します。分解の方法は事業モデルによって異なりますが、基本は「掛け算」「足し算」「割り算」の関係を見つけることです。

例: SaaS の MRR は次のように分解できます。

MRR = (新規 MRR + アップセル MRR + ダウンセル MRR - チャーン MRR)
    = ((新規契約数 × 平均単価) + (アップセル数 × アップセル単価) - ...)

各要素が次の階層の KPI となります。

ステップ 3: 各 KPI をさらに分解する

第 2 階層の KPI をさらに細かく分解します。「新規契約数」なら「リード数 × 商談化率 × 受注率」のように、コントロール可能な操作変数まで降りていきます。

ステップ 4: 末端の指標がアクション可能か確認する

ツリーの末端(葉)にある指標は「PdM やチームが直接動かせるレバー」になっている必要があります。「商談数」「ランディングページの CTR」「オンボーディング完了率」など、改善施策に直結するものが理想です。動かせない指標が末端にある場合は、もう一段分解する必要があります。

ステップ 5: チームで合意し、レビューサイクルを回す

KPI ツリーは PdM 一人で作るものではありません。エンジニア・営業・マーケ・CS など関係者全員で作成し、合意を取ります。完成後は週次でレビューし、ボトルネックになっている指標を発見します。月次でツリー自体の構造を見直し、事業環境の変化に合わせて更新します。

SaaS プロダクトの KPI ツリー実例

典型的な B2B SaaS の KPI ツリーは次のような構造になります。

ARR (KGI)
├── 新規 ARR
│   ├── 新規契約数
│   │   ├── リード数
│   │   │   ├── 流入セッション数
│   │   │   └── CV 率
│   │   ├── 商談化率
│   │   └── 受注率
│   └── 平均契約単価 (ARPU)
├── アップセル ARR
│   ├── アップセル提案数
│   └── アップセル受注率
└── チャーン ARR (マイナス)
    ├── 月次解約率
    │   ├── プロダクト体験スコア
    │   └── サポート対応満足度
    └── ダウングレード率

このツリーがあれば、「ARR を伸ばすために今期は CV 率改善に投資する」「来期はチャーン削減を優先する」といった意思決定が定量的に行えます。

B2C プロダクトの KPI ツリー実例

B2C アプリの KPI ツリーは次のような構造になります。

売上 (KGI)
├── 課金ユーザー数
│   ├── DAU (デイリーアクティブユーザー)
│   │   ├── 新規ユーザー数
│   │   │   ├── 流入数
│   │   │   └── 起動率
│   │   └── 継続率
│   │       ├── D1 リテンション
│   │       ├── D7 リテンション
│   │       └── D30 リテンション
│   └── 課金 CV 率
│       ├── 初回課金訴求の CTR
│       └── 課金完了率
└── 課金単価 (ARPPU)
    ├── 月額プラン構成
    └── アップセル / 追加購入率

KGI / KPI / OKR / ノーススターメトリックの関係

これらの指標系の用語は混同されがちなので、関係を整理します。

  • KGI: 事業全体の最終目標(売上・利益等)
  • KPI: KGI 達成のための中間指標。複数存在し、KPI ツリーで階層化される
  • OKR: 「四半期に何を変えたいか」のゴール設定。KPI のうち改善対象を Key Results として選ぶ
  • ノーススターメトリック: プロダクト全体を象徴する単一の最重要指標。KPI ツリーの第 2 階層あたりに位置することが多い

OKR や ノーススターメトリックの詳細は、本マガジンの別記事「OKR とは」「プロダクトマネジメント フレームワーク 15 選」で解説しています。

KPI ツリー運用でよくある失敗パターン

失敗 1: ツリーが大きすぎて誰も見ない

枝葉を増やしすぎて 100 個以上の指標が並ぶツリーは、結局誰も見なくなります。第 3〜4 階層までで止めるのが現実的です。

失敗 2: アクション可能でない末端指標

「ブランド認知度」「市場シェア」など、PdM が直接動かせない指標が末端にあると、施策に繋がりません。動かせるレバーまで降りていく工夫が必要です。

失敗 3: ツリー構造が間違っている

「掛け算 / 足し算 / 割り算」の関係になっていない分解は、ツリーとして機能しません。各層が論理的に上の層を構成しているかを必ず検証します。

失敗 4: 作って終わり、更新しない

事業環境は変わるので、KPI ツリーも 3 か月〜半年に 1 度は見直す必要があります。古いツリーをそのまま使い続けると、現実とのズレが生じます。

PdM のスキルとしての KPI ツリー

KPI ツリーを書ける力は、PdM の面接でも頻繁に問われます。「弊社のプロダクトの KPI ツリーを描いてください」という即興のお題に対して、論理的に分解できることがプロダクト思考の証明になります。日頃から自社・他社のプロダクトについて KPI ツリーを描く練習をしておくと、実務でも面接でも役立ちます。

まとめ

KPI ツリーは PdM の意思決定を客観化する基本ツールです。KGI を頂点に、計測可能でアクション可能な指標まで階層的に分解することで、チーム全員が「事業を伸ばすために今やるべきこと」を共有できるようになります。

初めて作る場合は完璧を目指さず、まず KGI を 1 つ決めて第 2 階層まで分解してみることから始めましょう。チームで議論しながら磨き上げていけば、数週間で実用的なツリーになります。

テーマ: プロダクトマネジメント フレームワーク

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