事業企画とは?仕事内容・必要スキル・キャリアパスを徹底解説
事業企画の定義・仕事内容・必要スキル・向いている人の特徴・キャリアパスを体系的に解説。経営企画・BizDevとの違い、PdMとの関係性もわかりやすく紹介します。
事業企画とは何か――定義と役割の全体像
事業企画の定義
事業企画とは、企業の中長期的な成長を実現するために、新規事業・既存事業の戦略立案から推進までを担う職種・業務領域です。「何を・なぜ・どのように事業として展開するか」を設計することが核心であり、経営層の意思決定を支える参謀的な役割を果たします。単なる計画書の作成にとどまらず、実行フェーズでの各部門調整や進捗管理まで担うケースが多いのが特徴です。
事業企画は特定の事業ドメインに深く関与します。全社の予算管理や中期経営計画を扱う経営企画とは異なり、担当する事業の市場・顧客・競合を深く理解したうえで、具体的な戦略と実行計画を描くことが求められます。そのため、マクロな視点と現場感覚の両方を持ち合わせることが重要です。
経営企画・事業開発・プロダクトマネージャーとの違い
混同されやすい職種との違いを整理しておくと、事業企画の輪郭がより明確になります。経営企画は全社視点での予算策定・中期経営計画の立案が主軸であり、複数事業を横断的に管理します。一方、事業企画は特定の事業ドメインに絞り込み、その戦略実行に近い位置で動きます。
事業開発(BizDev)は、パートナーシップ締結・M&A・アライアンス交渉など外部連携を通じて事業を拡大することが中心です。事業企画が内部の戦略設計・推進を担うのに対し、BizDev は外部リソースの獲得に特化している点が異なります。プロダクトマネージャー(PdM)との違いについては後述しますが、事業企画が「事業として何を実現するか」を定義するのに対し、PdM は「どのプロダクトで実現するか」を設計する役割分担が一般的です。
事業企画の主な仕事内容
戦略立案フェーズの業務
事業企画の仕事は、まず市場の実態を把握することから始まります。PEST分析で外部環境の変化を捉え、ファイブフォース分析で業界構造を理解し、3C分析で自社・競合・顧客の関係を整理します。これらのフレームワークを組み合わせることで、事業機会と脅威を体系的に特定します。
分析結果をもとに、事業計画書やビジネスモデルキャンバスを作成し、経営層へのプレゼンテーションを行います。このフェーズでは「なぜ今この事業に投資すべきか」という問いに対して、データと論理で説得力のある答えを示す能力が問われます。資料の完成度だけでなく、経営層の意思決定を引き出すファシリテーション力も重要です。
実行・推進フェーズの業務
戦略が承認されたあとは、実行フェーズへと移行します。KPIを設計し、モニタリングダッシュボードを構築して定期的なレポーティングを行うことが、事業企画の日常業務の大きな部分を占めます。数字の変化を素早く察知し、原因を分析して打ち手を提案するサイクルを回し続けることが求められます。
また、営業・マーケティング・開発・法務など複数部門を横断するプロジェクトの推進・調整も重要な業務です。各部門が異なる優先順位や評価軸を持つなかで、事業全体の目標に向けて合意形成を図る能力が問われます。事業企画担当者は「社内のプロジェクトマネージャー」的な役割を担うことも少なくありません。
新規事業立案フェーズの業務
新規事業の立案では、アイデア創出から始まり、PoC(概念実証)の設計、投資対効果の試算まで幅広い業務を担います。市場規模の推計・収益モデルの構築・リスク評価を行い、「この事業が成立するか」を多角的に検証します。仮説を素早く立て、最小限のコストで検証するリーンな思考が求められます。
社内稟議を通過させるための事業計画の精緻化や、外部資金調達を見据えたピッチ資料の作成も事業企画の守備範囲です。特にスタートアップや新規事業部門では、経営陣・投資家・パートナー企業など多様なステークホルダーに対して事業の魅力を伝える機会が多く、プレゼンテーション力と財務モデリング力の両方が問われます。
事業企画に必要なスキルセット
ハードスキル
事業企画において最も基礎となるハードスキルは財務・会計の知識です。P&L(損益計算書)を読み解き、ROI(投資対効果)を計算し、DCF(割引キャッシュフロー)法で事業価値を評価できることは、経営層との対話において不可欠です。財務三表(損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書)の基礎を押さえておくことが、事業企画担当者としての信頼性を高めます。
データ分析力も欠かせません。SQLを用いたデータ抽出、ExcelやGoogle スプレッドシートでの集計・モデリング、TableauやLookerなどのBIツールを活用した可視化ができると、意思決定の質と速度が大きく向上します。定量的な根拠をもとに議論を進める文化が根付いている企業ほど、この能力の重要性は高まります。
ソフトスキル・思考力
構造化思考・ロジカルシンキングは事業企画の根幹をなすソフトスキルです。MECEの原則に基づいて問題を分解し、ピラミッドストラクチャーで論点を整理することで、複雑な課題をシンプルに伝えられるようになります。コンサルティングファームで鍛えられるこの思考法は、事業企画においても高く評価されます。
ステークホルダーマネジメントも重要なソフトスキルです。事業企画は権限を持たずに多部門を動かす必要があるため、相手の立場・利害・優先順位を理解したうえで合意形成を図るコミュニケーション力が求められます。社内政治を乗り越えながら推進力を維持するためには、信頼関係の構築と粘り強い交渉力が不可欠です。
業界・ドメイン知識
担当する事業の市場・競合・顧客を深く理解することは、事業企画の質を左右します。業界特有の商慣習・規制・キープレイヤーを把握していなければ、現実から乖離した戦略を描いてしまうリスクがあります。入社後に急速にキャッチアップする姿勢と、業界ネットワークを広げる行動力が求められます。
テック系企業やSaaS企業では、プロダクト開発プロセスの基礎知識も求められる傾向があります。アジャイル開発・スプリント・ロードマップといった概念を理解していると、開発チームとの協働がスムーズになります。エンジニアリングの詳細を知る必要はありませんが、プロダクト開発の流れを把握していることは大きなアドバンテージになります。
事業企画に向いている人の特徴
向いている人のプロフィール
事業企画に向いているのは、「なぜこの事業が存在するのか」という問いを常に持ち続けられる人です。数字で事業の現状を把握しながら、同時に顧客や市場の物語を語れる人は、経営層にも現場にも響くコミュニケーションができます。定量と定性の両方を行き来できる思考の柔軟性が、事業企画担当者の強みになります。
また、曖昧な課題を自ら構造化し、複数部門を巻き込みながら推進できる人も事業企画に適しています。誰かに指示されるのを待つのではなく、課題を自ら発見して解決策を提案し、関係者を動かしていく主体性が求められます。「答えのない問い」に向き合い続けることを楽しめる人が、この職種で長く活躍できます。
向いていない人のパターン
単一の専門領域を深く掘り下げることを好み、横断的な調整業務が苦手な人は、事業企画の仕事にストレスを感じやすいかもしれません。事業企画は「自分の専門性を磨く」よりも「多様な専門家を束ねる」ことに価値を置く職種です。専門家として認められたいという欲求が強い場合は、別のキャリアパスが合っている可能性があります。
短期的な成果や即時フィードバックを重視し、長期戦略の不確実性に耐えられない人も向いていないパターンの一つです。事業企画の成果は数年単位で現れることが多く、途中経過では評価が見えにくい局面もあります。曖昧さや不確実性を受け入れながら、長期的な視点で粘り強く取り組める精神的な耐性が必要です。
事業企画のキャリアパスと年収水準
典型的なキャリアルート
事業企画職へのキャリアルートは大きく二つに分かれます。一つ目は、コンサルタント・銀行・総合商社などで戦略思考・財務分析・プロジェクト管理を鍛えたのち、事業会社の事業企画部門に転じるルートです。このルートでは、事業部長・COO・起業家へとキャリアを発展させる人が多く見られます。
二つ目は、営業・マーケティング・エンジニアなど現場職として事業の実態を深く理解したのち、社内異動で事業企画に移るルートです。現場経験を持つ事業企画担当者は、実行可能性の高い戦略を描ける強みがあります。その後、経営企画・GM(ゼネラルマネージャー)・事業部長へとステップアップするケースが典型的です。
年収水準の目安(2026年8月時点)
事業企画職の年収は、企業規模・業界・個人のグレードによって大きく異なります。スタートアップでは500〜900万円程度が一般的な目安ですが、ストックオプションが付与される場合は上振れの可能性があります。特に成長フェーズのスタートアップでは、固定給は抑えめでもエクイティで大きなリターンを得るケースもあります。
大手事業会社では600〜1,200万円程度の幅があり、グレード・業界・担当事業の規模によって差が生じます。外資系企業や金融・コンサル出身者が多い企業では、さらに高い水準が提示されることもあります。事業企画は経営に近いポジションであるため、成果次第で早期に昇格・昇給できる環境が整っている企業も多いです。
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事業企画とプロダクトマネージャー(PdM)の関係
PdM が事業企画スキルを必要とする理由
プロダクト戦略は事業戦略の一部です。PdM がプロダクトのロードマップを描く際には、事業全体のKPIとの整合性を常に意識する必要があります。「このプロダクト機能が事業のどの指標を動かすのか」を説明できなければ、経営層や事業企画チームとの対話が成立しません。事業企画の視点を持つPdMは、より説得力のある意思決定ができます。
ビジネスモデル設計・収益化戦略の立案は、事業企画とPdMの重複領域です。特にSaaSやプラットフォームビジネスでは、プライシング設計・マネタイズモデルの検討がプロダクト開発と密接に絡み合います。PdMが事業企画的な思考を持つことで、プロダクトと事業の両輪を回す力が生まれます。
役割分担と協働のポイント
一般的な役割分担として、事業企画が「何を・なぜ」を定義し、PdMが「どのプロダクトで実現するか」を設計するという構図があります。事業企画が市場機会・事業目標・成功指標を定め、PdMがそれをプロダクトの機能・体験・ロードマップに落とし込む流れです。両者が密に連携することで、事業とプロダクトの方向性が一致した強い組織が生まれます。
スタートアップでは、一人が事業企画とPdMの両役割を兼務するケースも多く見られます。リソースが限られる環境では、戦略立案から実行まで一気通貫で担う「事業企画兼PdM」的な人材が重宝されます。このような経験を積むことで、事業全体を俯瞰しながらプロダクトを動かせる希少な人材になれます。
事業企画を学ぶためのフレームワーク・参考資料
必須フレームワーク一覧
事業企画の実務で頻繁に使われるフレームワークを体系的に押さえておくことが、スキルアップの近道です。外部環境分析では、PEST分析(政治・経済・社会・技術の変化を捉える)、マイケル・ポーターのファイブフォース分析(業界の競争構造を把握する)、3C分析(自社・競合・顧客の関係を整理する)が基本セットです。
内部分析・戦略立案では、SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威の整理)、バリューチェーン分析(価値創造プロセスの可視化)、アレックス・オスターワルダーが提唱したビジネスモデルキャンバス(事業モデルの9要素を一枚で整理する)が実務でよく使われます。これらのフレームワークは手段であり、使いこなすには実際の事業課題に当てはめる反復練習が不可欠です。
実践的な学習ステップ
事業企画スキルを効率よく習得するには、まずケーススタディで思考の型を身につけることが有効です。MBAの教材やマッキンゼー・BCGなどのコンサルティングファームが公開している事例を読み込み、「自分ならどう分析・提案するか」を考える訓練を積みましょう。その後、社内の実プロジェクトで実践することで、理論と現実のギャップを埋めていきます。
財務三表の読み方とKPI設計の基礎を先に固めておくと、実務への適応が格段に早くなります。「売上・コスト・利益の構造を理解する」「事業目標を測定可能な指標に分解する」という二つの能力は、事業企画のあらゆる業務の土台になります。書籍では『ファイナンス思考』(朝倉祐介著)や『ビジネスモデル・ジェネレーション』(オスターワルダー著)が入門として参考になります。
事業企画職への転職・キャリアチェンジを考えるなら
転職市場での事業企画の需要
DX推進・新規事業強化を背景に、事業企画人材の需要は拡大傾向にあります。デジタル化の波が既存産業に押し寄せるなか、「新しい事業モデルを設計できる人材」への需要は業界を問わず高まっています。特にテック企業・スタートアップ・大手企業の新規事業部門では、事業企画の採用が活発です。
未経験から事業企画に転職する場合、「コンサル・金融出身」か「社内異動の実績あり」が有利なポジションを得やすい傾向があります。前者は分析力・論理的思考力が評価され、後者は事業の現場感覚が強みになります。未経験での転職を目指す場合は、現職での事業企画的な業務経験(KPI管理・プロジェクト推進・経営層へのレポーティングなど)を積み上げてから転職活動に臨むことが効果的です。
PdM 経験者が事業企画に転じる際のポイント
PdM経験者が事業企画に転じる際には、プロダクトKPI管理・ロードマップ策定・ユーザーリサーチの経験が高く評価されます。「事業目標をプロダクトに落とし込んだ経験」は、事業企画においても直接活かせる強みです。特にグロースフェーズのプロダクトで数値改善を主導した経験は、事業企画担当者としての即戦力性を示す有力な実績になります。
一方、財務・P&L管理の経験が薄い場合は補強が必要です。事業企画では「この施策にいくら投資して、いつ回収できるか」を説明する場面が多く、財務的な思考が求められます。転職前に財務三表の読み方・ROI計算・事業計画書の作成を独学で習得しておくと、面接での説得力が増します。
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テーマ: 経営・戦略分析
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