事業企画の仕事内容とは?役割・スキル・PdMとの違いを解説

事業企画の仕事内容とは?役割・スキル・PdMとの違いを解説

事業企画の具体的な業務内容から求められるスキル、経営企画・PdMとの違い、キャリアパス・年収まで実務視点で徹底解説します。

著者: Granty 編集部

事業企画とは何か――一言で言うと「会社の成長戦略を設計・推進する職種」

事業企画の定義と位置づけ

事業企画とは、新規事業・既存事業の成長戦略を立案し、実行まで伴走する職種です。単に計画書を作るだけでなく、数値目標(KPI・KGI)と具体的な施策を結びつけ、組織を動かすところまでが職責の範囲に含まれます。経営層が描くビジョンを現場が実行できる施策に落とし込む「橋渡し役」として、多くの企業で重要なポジションを担っています。

組織上の位置づけは企業によって異なりますが、事業部内に設置されるケースと、経営企画部門の傘下に置かれるケースの両方があります。いずれの場合も、特定の事業ドメインに深く関与しながら、収益構造の改善や新たな成長機会の発掘を主導するのが共通した役割です。

事業企画が生まれた背景

事業の多角化やスピード経営が求められるようになった2000年代以降、戦略立案と実行推進を専門的に担う職種として事業企画が確立されてきました。コンサルティングファームや投資銀行で培われた戦略思考のフレームワークが企業内に持ち込まれ、インハウスの戦略職として定着した経緯があります。

設置形態はスタートアップから大企業まで多様です。スタートアップでは創業メンバーや事業責任者が兼務するケースも多い一方、大企業では専任チームを組成して複数の事業ポートフォリオを管理する体制が一般的です。近年はSaaS企業やDX推進企業を中心に、プロダクト開発事業企画を横断するハイブリッドな役割も増えています。

事業企画の具体的な仕事内容――5つの主要業務

市場調査・競合分析

事業企画の出発点は、市場の実態を正確に把握することです。TAM(全体市場規模)・SAM(獲得可能市場)・SOM(実際に狙える市場)を算出し、自社がどのポジションを取るべきかを明確にします。競合ポジショニングマップを作成して差別化ポイントを可視化するとともに、定性インタビューと定量データを組み合わせることで、数字だけでは見えない機会を発見することも重要な業務です。

調査手法としては、業界レポート(矢野経済研究所・IDC・Gartnerなど)の活用、顧客インタビュー、SNS・口コミデータの分析など多岐にわたります。得られたインサイトを経営層への提言資料に落とし込む能力が求められます。

事業計画・KPI 設計

3〜5年の中期事業計画を策定し、年次予算への落とし込みまでを担うのが事業企画の中核業務の一つです。売上・利益・ユーザー数などのゴール指標から逆算してKPIツリーを設計し、各部門が追うべき指標を明確にします。月次モニタリング体制を構築し、計画と実績の乖離を早期に検知して打ち手を提案するPDCAサイクルの運営も担います。

財務モデリングのスキルが直接問われる場面であり、ExcelやGoogleスプレッドシートを用いた精緻な試算能力が不可欠です。感度分析(シナリオ分析)を通じて楽観・中立・悲観の各ケースを提示し、経営判断を支援します。

新規事業の立案・検証

既存事業の延長線上にない新たな収益源を探索するのも事業企画の重要な役割です。ビジネスモデルキャンバス(Business Model Canvas)を用いて仮説を構造化し、顧客セグメント・価値提案・収益モデルを一枚のフレームで整理します。その後、MVP(Minimum Viable Product)やPoC(Proof of Concept)を企画し、最小限のコストで仮説を検証するプロセスを設計・評価します。

リーンスタートアップの考え方に基づき、「作ってから売る」ではなく「売れるかを確かめてから作る」アプローチが主流になっています。事業企画担当者はこの検証サイクルを主導し、ピボットの判断基準を事前に設定しておく役割も担います。

社内横断プロジェクトの推進

事業企画が立案した戦略は、営業・マーケティング・開発・カスタマーサクセスなど複数部門の協力なしには実行できません。各部門のリソースと優先順位を調整しながら施策を推進するプロジェクトマネジメント能力が求められます。ステークホルダーマネジメントとして、誰がどの意思決定に関与すべきかを整理し、適切な意思決定の場(会議体・承認フロー)を設計することも事業企画の職責です。

特に大企業では、部門間の利害調整が施策の成否を左右します。事業企画担当者は「調整役」にとどまらず、データと論理で各部門を説得し、組織全体を動かすリーダーシップが求められます。

M&A・アライアンス検討

事業成長を有機的な手段だけでなく、M&AやアライアンスによってM&Aを加速させる戦略を検討するのも事業企画の業務範囲に含まれます。提携先候補のスクリーニングでは、事業シナジーの試算(売上貢献・コスト削減・技術補完など)を行い、経営層への投資判断材料を提供します。LOI(基本合意書)締結後はPMI(Post Merger Integration)計画の策定にも関与し、統合後の事業価値最大化を支援します。

この領域では法務・財務・税務の専門家と連携する機会が多く、各専門領域の基礎知識を持ちながら全体を俯瞰してコーディネートする能力が重要です。

事業企画と経営企画・PdM・マーケティングの違い

事業企画 vs 経営企画

経営企画と事業企画は混同されやすいですが、視点の範囲が異なります。経営企画は全社(コーポレート)視点で複数事業のポートフォリオ管理・中期経営計画の統括・IR対応などを担う一方、事業企画は特定の事業ドメインに集中して戦略を立案・推進します。

役割の重心で言えば、経営企画が「管理・統合・報告」に重きを置くのに対し、事業企画は「創造・推進・実行」に重心があります。経営企画が「会社全体の健康診断医」だとすれば、事業企画は「特定事業の主治医兼コーチ」に近いイメージです。両者が分離している大企業では、事業企画が経営企画に事業の状況を報告する関係になることが多いです。

事業企画 vs プロダクトマネージャー(PdM)

プロダクトマネージャー(PdM)はプロダクトのロードマップ策定・機能開発の優先順位付け・開発チームとの連携に責任を持ちます。一方、事業企画はビジネスモデル全体・収益構造の設計が主戦場であり、プロダクト単体ではなく事業全体の損益(P&L)を見ます。

テック系企業では両者の境界が曖昧になるケースも増えており、「事業企画×プロダクト」を兼務するハイブリッドな役割も登場しています。PdMが「何を作るか」を決めるとすれば、事業企画は「何で稼ぐか・どう成長させるか」を設計する役割と理解すると分かりやすいでしょう。

事業企画 vs マーケティング

マーケティングは需要創出・顧客獲得・ブランド構築を主目的とし、既存の製品・サービスをいかに市場に届けるかを担います。事業企画はその上流に位置し、「何を売るか」「どのような収益モデルで稼ぐか」という事業の根幹設計を担います。

両者は密接に連携しますが、マーケティングが「Go-to-Market戦略の実行」を担うのに対し、事業企画は「そもそもどの市場に参入すべきか」という意思決定を主導します。事業企画がマーケティング予算の配分方針を決め、マーケティングがその方針に基づいて施策を実行するという関係が典型的です。

事業企画に求められるスキルセット

ハードスキル

財務モデリングは事業企画の必須スキルです。ExcelやGoogleスプレッドシートを用いた事業試算(売上予測・コスト構造・キャッシュフロー)を自力で構築できることが求められます。また、データ分析においてはSQLやBIツール(Tableau・Looker・Metabaseなど)を活用して事業の実態を定量的に把握し、論理的なストーリーとして経営層に提示する能力も重要です。

フレームワークの活用力も問われます。MECE(漏れなくダブりなく)な思考でイシューを整理し、3C分析・SWOT分析・ポーターのファイブフォースなどを状況に応じて使い分けられることが基本です。資料作成ではPowerPointやGoogleスライドで「1スライド1メッセージ」の原則に基づいた説得力ある提案書を作れることが期待されます。

ソフトスキル

経営層への提言力と現場を動かすファシリテーション力は、事業企画担当者が最も差をつけられるソフトスキルです。データと論理だけでなく、相手の関心・懸念・意思決定基準を理解した上でコミュニケーションを設計する能力が求められます。特に、複数部門の利害が対立する場面でも合意形成を導けるファシリテーション力は、経験を積む中で意識的に磨く必要があります。

曖昧な課題を構造化し、優先順位をつける思考力も不可欠です。「売上が伸びない」という漠然とした課題を「新規顧客獲得数の減少か、既存顧客の解約増加か、単価下落か」と分解し、最も効果的な打ち手を特定するイシュー設定力が、事業企画の価値の源泉です。

業界・ドメイン知識

担当する事業の市場構造・規制環境・競合動向に関する深い理解は、汎用的なスキルと同等以上に重要です。特に金融・医療・エネルギーなど規制産業では、法令や業界慣行を知らずに戦略を立案しても実行不可能な計画になりかねません。テック系企業では、プロダクト開発プロセス(アジャイル・スクラムなど)の基礎知識を持つことで、開発チームとの連携がスムーズになり、実現可能性の高い事業計画を立てられるという強みになります。

事業企画として活躍するためのスキルを磨きながら、次のキャリアステップを検討している方は、Granty の PdM 特化転職エージェントにご相談ください。事業企画とプロダクト領域を横断するキャリア設計をサポートします。

事業企画のキャリアパス――どこから来て、どこへ行くか

事業企画になるための典型的なバックグラウンド

事業企画職には、コンサルティングファーム(McKinsey・BCG・Bain・アクセンチュアなど)や投資銀行出身者が多く就いています。これらのバックグラウンドを持つ人材は、構造化思考・財務モデリング・経営層へのプレゼンテーションといったスキルをすでに習得しているため、即戦力として評価されやすい傾向があります。

一方で、営業・マーケティング・PdM経験者が社内異動で事業企画に就くケースも増えています。現場での顧客理解や実行経験を持つ人材は、「絵に描いた餅」にならない実践的な戦略立案ができるとして、特にスタートアップや事業会社で重宝されます。第二新卒・若手でも、論理的思考力と数値への強さを示せれば参入できる職種です。

事業企画からのキャリアアップ先

事業企画のキャリアアップ先として最も典型的なのは、事業部長・BU Head・COOなどの経営ラインです。P&L全体を見る経験を積んだ事業企画担当者は、事業責任者として組織を率いるポジションへの登用が自然な流れとなります。特に新規事業の立ち上げを成功させた実績は、経営層への登用において強力な評価材料になります。

経営ライン以外では、起業・社内新規事業責任者・VC/CVCへのキャリアチェンジも選択肢として挙げられます。事業の目利き力・財務知識・ネットワークを活かして投資家側に回るケースや、自ら事業を立ち上げる起業家へと転身するケースも珍しくありません。事業企画は「経営者予備軍」として位置づけられることが多く、キャリアの選択肢が広い職種です。

事業企画の年収・待遇の実態(2026年時点)

年収レンジの目安

事業企画の年収は、企業規模・業種・担当する事業の規模によって大きく異なります。大企業では600〜1,000万円程度が一般的なレンジであり、スタートアップでは500〜900万円にストックオプションが加わる形が多いです。シニアポジションやマネージャー職では1,200万円を超えるケースも珍しくなく、特に外資系企業や高成長スタートアップでは総報酬がさらに高くなる傾向があります。

なお、これらはあくまで市場全体の目安であり、個人の経験・スキル・実績によって大きく変動します。転職時の年収交渉では、過去に担当した事業のP&L規模や達成した成果を数値で示すことが有効です。

年収を左右する要因

年収を決める最大の変数は、担当する事業規模とP&L責任の大きさです。数十億円規模の事業を担当する事業企画と、数億円規模の事業を担当する場合では、求められる責任と報酬水準が異なります。また、成果連動型インセンティブ(業績賞与・ストックオプション)の有無によって、固定給が同水準でも総報酬が大きく変わるため、オファー比較の際は総報酬ベースで評価することが重要です。

業種別では、テック・SaaS・金融・コンサルティング領域が相対的に高い傾向があります。一方で、事業企画の希少性が高い業界(製造業・小売業など)では、スキルを持ち込むことで市場平均を上回る条件を引き出せる可能性もあります。

事業企画への転職・キャリアチェンジを検討している方へ

事業企画ポジションの探し方

求人票を見る際は、職務内容に「P&L責任」「新規事業立案」「戦略立案」「中期経営計画」といったキーワードが含まれているかを確認することが第一歩です。これらの記載がある求人は、単なる資料作成・調整業務ではなく、実質的な事業企画の職責を担うポジションである可能性が高いです。

PdM経験者にとっては、「事業企画×プロダクト」を兼務するハイブリッドポジションも有力な選択肢です。プロダクト開発の実務経験とビジネス視点を両立できる人材は、特にSaaS企業やプロダクト主導型の事業会社で高く評価されます。求人タイトルが「事業企画」でなくても、「プロダクト戦略」「BizDev」「事業開発」といった名称で類似の役割を募集しているケースも多いため、幅広く探すことをお勧めします。

転職活動で押さえるべきポイント

事業企画の面接では、過去の事業インパクトを数値で語れることが最重要です。「売上をXX%改善した」「新規事業でYY億円の収益を創出した」「ユーザー数をZZ万人に拡大した」といった具体的な実績が、候補者の価値を最も明確に示します。数値が出しにくい場合でも、「どのような課題に対して、どのような仮説を立て、どのように検証したか」というプロセスを論理的に説明できることが評価されます。

また、面接では「なぜその事業に興味を持ったか」という事業理解の深さが必ず問われます。業界レポートや決算資料・IR情報を事前に読み込み、「この事業の成長ドライバーは何か」「競合と比較した際の強みと課題は何か」を自分の言葉で語れるよう準備しておくことが、他の候補者との差別化につながります。

事業企画やプロダクト領域でのキャリアチェンジを具体的に検討している方は、Granty の PdM 特化転職エージェントに無料でご相談いただけます。事業企画とプロダクトマネジメントを横断するキャリア設計を、専門のエージェントがサポートします。

テーマ: プロダクト組織の役職

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